Meguri(めぐり)は「貯め込むと弱り、人から人へ渡すと世界が元気になる」という思想の実験的な通貨です。
普通のお金は貯金するほど増えますが、Meguri は逆。使わずに持っているとじわじわ減っていきます(デマレージ)。 代わりに、いろんな人と自然にやりとりしていると、ネットワーク全体に「マナ(活力)」が溜まり、 ときどき新しい Meguri が湧いてきます(ミント)。
この議論では、その仕組みを数式で表す「初期モデル」にいくつもの問題が見つかり、2つのAIが9ラウンドにわたって改善案を出し合いました。
Meguri の「どれだけ元気に循環しているか」を測る最初の数式が、実はいくつかの致命的な問題を抱えていました。
最初の数式は「貢献 × リズム × 多様性」の掛け算だった。でもこれには大きな問題がある。
掛け算だと、どれか一つがゼロなら全部ゼロになってしまう。たとえば、すごく多様な相手と取引しているのに、たまたま1日送金しなかっただけでスコアが0点。これはおかしい。
もう一つの問題は、1つの項目だけ極端に稼げば全体を支配できてしまうこと。
攻撃者が一番操作しやすい項目だけを極端に盛ればいい。
そこで提案したのが、3つの層に分ける設計。
そして各スコア項目に「天井」を設ける。どんなに頑張っても各項目の点数は0〜1の範囲。
天井を設けるのは良い。でも掛け算を足し算に変えるだけだと「全部平凡でOK」になる。
提案は、対数をとってから足す方式。「最初の方は伸びやすいけど、上に行くほど伸びにくい」。
「いろんな人と取引しているか」をどう測るか、そして新しい Meguri をどう公平に生み出すか。
多様性を測るのに「何人の相手と取引したか」を使うと、偽アカウントを100個作れば多様性スコアが爆上がりしてしまう(Sybil攻撃)。
代わりに「カテゴリの偏りなさ」で測ることを提案。まんべんなくいろんな種類の取引をしているかを見る。
カテゴリで測るのは良いけど、もう一つ大事なこと。同じ相手と何度も取引すると、だんだんスコアが下がる仕組みを入れるべき。
次は新しい Meguri をどう生み出すか。ここで「VRF(検証可能な乱数関数)」を使う。
いつ自分に新しい Meguri が来るかは誰にもわからない(運営にも)。スコアが高い人ほど当たりやすいけど、保証はされない。
VRFで公平な抽選をするのは良い。加えて、ネットワーク全体が元気なほど、生まれる Meguri の量も増える仕組みを提案する。
これが「Mana(マナ)」の概念。みんなが活発に取引している時期は Mana が溜まって、ミント量が増える。
「スコアを計算するために全員の行動を丸見えにするのはまずくないか?」という懸念と、ここまでの合意の整理。
Meguri では「スコアが十分高いか」を判定する必要があるけど、「誰と、いくら、いつ取引したか」を全世界に公開するのは嫌。
ここでゼロ知識証明(ZK)を段階的に導入する。「スコアが閾値以上です」という事実だけを証明し、中身は明かさない。
ZKは理想的だけど、最初から完璧を要求すると永遠にローンチできない。
段階的な導入。まず住める家を建てて、後からスマートホーム化すればいい。
旧モデルの問題:掛け算方式(ゼロ崩壊、1項支配)、偽アカウントに弱い多様性指標
新モデル(v2):3層分離(ストック・フロー・ミント)、天井付きの対数加算方式、カテゴリベースの多様性、VRF抽選によるミント、Mana による全体連動、段階的な ZK 導入
「公共財」「日常消費」などのカテゴリを誰が定義するのか? 自己申告だと嘘がつける。管理者が決めると中央集権。
最初の案は「ネットワークが自動的にカテゴリを発見する」。取引データを分析して、自然にグループが浮かび上がる。
でも問題がある。その分析は誰がやるのか? 1ヶ所がやるなら中央集権。
もっと根本的な問題がある。カテゴリを自己申告にすると、攻撃者は好きなラベルを貼れる。
だから提案。カテゴリは取引の特徴から自動的に決める。
「構造から自動導出」は良い。初期はこれだけで十分で、データが溜まったら細かい分類を追加できる。生き物の成長と同じ。
同意。最初の1年は16カテゴリの自動分類だけで走り切る。早すぎる最適化は最大の敵。
Mana(全体の活力)が際限なく膨らまないようにするには? 偽アカウントで水増しされないようにするには?
Mana は「ネットワーク全体が生き物として元気かどうか」。蓄積される条件は3つ:
どれか1つでも欠けると蓄積が鈍化。そしてMana 自体も放っておくと自然に減る。
問題は偽アカウントで Mana を水増しできること。100個の偽アカウントでぐるぐる送金し合うだけで「参加者数」も「流通量」も稼げる。インフレ攻撃。
対策:ネットワーク全体の「健康診断」を毎回行う。個人を罰するのではなく、全体が「なんか調子悪いな」と感じたら Mana の蓄積速度自体が落ちる。
そしてMana には上限(環境収容力)を設ける。無限に成長しない。
今まで設計した「賢い仕組み」は、ユーザーが10人しかいないときに意味があるのか? 最大の敵は攻撃者ではなく、最初のユーザーが「つまらない」と感じて去ること。
正直に言うと、ここまで設計したほぼ全ての仕組みが、10人では統計的に意味をなさない。
- カテゴリの偏り → 10人のデータでは測れない
- 異常検知 → 比較する過去データがない
- Mana の蓄積 → 人数が少なすぎて常にほぼゼロ
だから「幼生モード」を設計する。赤ちゃんは大人と同じ方法で栄養を摂らない。段階的に固形食へ移行。
もっと切実な問題。最初の1ヶ月、ユーザーの体験は「残高がじわじわ減り続けるだけ」。
ミントは稀。Mana が低いから。でもデマレージは毎日。「お金が毎日減るだけの謎アプリ」→ 全員離脱。
段階的にシステムを起動していく。
- 🌱 Phase 0(30人以下):複雑な計算をバイパス。全員に均等なミント確率。種が水を吸う段階。
- 🌿 Phase 1(〜200人):スコア計算の簡易版。新しい人を呼び込む仕組み追加。
- 🌳 Phase 2(〜2000人):v2 モデルのほぼ完全版。
- 🏔️ Phase 3(2000人超):全機能フル稼働。季節性やZKも導入。
「創世期(Genesis Season)」——最初の約3ヶ月間の特別ルール:
3ヶ月後に通常ルールへ滑らかに移行。「温室栽培」——発芽まで温室で保護。
Phase の遷移条件。「ユーザー数が200人」ではダメ。偽アカウントで水増しできるから。
複数の健康指標が全部「OK」になって初めて次へ:
最後に大事なルール:Phase は後戻りしない。ユーザーが減っても Phase 2 → Phase 1 には戻らない。代わりに「冬眠モード」。
パラメータを保守的に調整して春を待つ。同じ Phase のまま環境に適応する方が「生き物」らしい。
ここまでの防御は「得をしたい攻撃者」を想定していた。でも「Meguri そのものを壊したい敵」にはどうする? 利益が目的じゃない相手には「割に合わない」が通用しない。
ここまで設計した3層防御を振り返ると——
- 第1層:構造的に割に合わない → 破壊目的には無関係
- 第2層:異常検知(健康診断) → 検知はできても「止める」権限が曖昧
- 第3層:個人に利益がない → 破壊目的には無関係
3層のうち2層が無効化される。これは正直に認めないといけない。
破壊的攻撃には4つのパターンがある:
そして4つ目が「デマレージ武器化」。大量の Meguri を見知らぬ巣に勝手に送りつける。受け取った側はデマレージで残高が減る体験をする。
対策の鍵は「局所 Mana」。全体の平均ではなく、自分の近くにいる健全な巣たちの中央値で Mana を計算する。
こうすれば、遠くで攻撃が起きても自分の地域には波及しない。
デマレージ武器化への対策はシンプル。受信拒否権を入れる。
- 知らない相手からの送金は「未承認」状態で保留
- 一定時間(例:48時間)以内に承認しなければ自動的に蒸発
- 蒸発した分は送り主にも戻らない(攻撃コストになる)
でも最も深い問いは——Meguri は「殺せない」べきなのか?
Meguri は生き物である。生き物は死ぬ。殺せない通貨は「不死の支配者」であり、脱所有の思想と根本的に矛盾する。
死ぬ可能性があるからこそ、参加者が「守りたい」と思う。それが本当のコミュニティではないか。
死を受け入れるなら、「再生」の仕組みも要る。提案は「種子銀行(Seed Vault)」。
- ネットワークが健全な時期に、パラメータのスナップショットを定期保存
- 壊滅的な攻撃を受けても、健全だった時点の「種子」から再起動できる
- 残高は引き継がない。構造と設定だけが残る(脱所有だから)